今回の記事では、2021年11月4日(木)に開催されたTeachme Bizユーザー交流会のレポートvol.1をお届けいたします。
交流会では、大郷運輸株式会社(以下大郷運輸様)の小出様より、石油輸送業務で取り入れていただいたTeachme Bizの導入からご活用方法の中でも、「運送予定の自動配信」について詳しくお話いただきました。ここでは、その内容をご紹介します。
2021年に創業60周年を迎えた一般貨物運送事業・構内作業・倉庫業を担う企業。主に、石油運送業務・危険物倉庫業務と一部保全品を扱う。ガソリンスタンドへのガソリンや灯油の納入、ホームセンターへ灯油の納入、工場やホテルなどへ重油の納入などを行っている。主な取引先は、出光興産株式会社、全農エネルギー株式会社など。

3つの柱を軸にTeachme Bizを導入

小出氏:
Teachme Bizの導入にあたり、事務の3名をTeachme Bizの管理者・副管理者とする体制を作りました。管理者になった3名は、「業務内容を細やかな目線で見られる社員」という観点で選ばれ、上司からTeachme Bizを託されました。

Teachme Bizの導入にあたり、3つの柱を立て、スタートしました。
まず1つ目の定型業務のマニュアル化が、大事な柱の一つです。私自身も、「私にしかわからない仕事」がありますが、これまでに二度、体調不良のために1週間ほど休むという経験をしております。その都度、周囲に最低限の仕事を割り振りしお願いしておりましたが、その頃から「どんな仕事でも、誰でもできるようにした方がいいのではないか」という想いをもっていました。定型業務をマニュアル化することにより、個人の属人業務がなくなる、すなわち誰でもできる状態にしていきたいと考えています。
2つ目が、事業所の運営均質化です。これは、Teachme Biz導入時に上司から「事業所により管理表の作成にバラつきがあり、重要性の捉え方に違いがあるようなので、均質化していきたい」という考えを聞いていたため、柱の一つに置きました。
そして3つ目が、運送予定の自動配信です。3つの柱の中ではこちらを軸として進めてきたので、今回は運送予定の自動配信について、詳しくお話します。
運輸会社の要である『運送予定の自動配信』で従業員の負担軽減を目指した
小出氏:
石油運送業務は、冬が繁忙期です。弊社があります宮城県塩釜市は、県内では寒さの厳しくない場所ですが、配送先の中には雪深いところも多数あり、寒い時期には、灯油や重油の消費量はかなり増えます。夏場よりも冬場の車両稼働台数が増加するのです。
車両(タンクローリー)の稼働台数が増えるということは、乗務する者も増えます。配送予定はお客様によって異なり、夕方に集中して翌日分が決定します。そのため夕方になると、翌日分の配送内容を確認するため、100名ほどの乗務員から電話が入るような状態でした。

事務所では、電話が入る度に運行管理者が目の前の仕事の手を止め電話対応することになり、莫大な時間をその対応に費やす状況になります。集中して電話がかかってくると5、6人が常に電話対応に追われる感じで、いろいろな業務が後回しになっていたのです。
昨今の労働環境事情も踏まえ、乗務員と管理者の負担軽減を考慮し、Teachme Bizを使用してどうにか解決できないかと考え、3つの柱の中でも「運送予定の自動配信」を軸とすることにしました。
無理な完全デジタル化をせず、苦手意識を持たない範囲で導入を進めた
小出氏:
Teachme Biz導入の際は、以下のような流れで行いました。
- 乗務員に配車表を配信するための手順書を作成
- 繰り返しテストして手直しする
- 実際に配信を行う事務所の担当者が使えるようなマニュアルを作成
目標としたのは、乗務員にも、事務所担当者にも、一番抵抗なく受け入れてもらえるものを作ることです。だらだら先延ばししないように導入時期も具体的に決めてから、取り組みを開始しました。
一番車両の多い出光様の乗務員に向けて、2020年11月に導入し、繁忙期を経て本格的に今年、2021年7月から他の車両の乗務員にも周知しています。マニュアル作りは、作成に携わらない時間が長くなることにより操作方法を忘れてしまうことも考えられたので、主に3名で対応してもらい、誰が休んでもできるようにしています。
マニュアルを作成する3名は、デジタル操作に関してはあまり得意ではありません。それも考慮して、スマホアプリ、Webアプリ、ブラウザなどすべて使用しますが、なるべく少ない操作で対応できるよう考えました。具体的には、PDFの取り込みなど、Webアプリでしかできないモノの特性を活かして作成するようにしています。
それでもやはり慣れるまでは、一つ抜け二つ抜け……とミスが出てくるところもありました。その穴をなくすように、紙ベースでマニュアルを見るようにしたり、チェック表を活用したりと、アナログなものも取り入れています。すべてをデジタル化というよりも、一部についてはアナログでもOKにして、なるべく苦手意識を持たないように配慮しています。

乗務員向けには必要な情報だけが届くようにし、不明点はサポートをして解決することでアプリ浸透を促進
小出氏:
マニュアルを閲覧する乗務員については、自分が乗務する車両以外のマニュアルが配信されないようにするなどの工夫をしました。すべての車両マニュアルが完成するたびに通知が行くと、配送先を間違ってしまう可能性が0ではありません。
そのため、業種別に車両用フォルダを10個ほどに分けて運用しています。マニュアル作成側ではすべてのフォルダが見られますが、乗務員側は自分に必要なフォルダだけがスマホ画面に表示されるようにして、誤解を与えない・招かないようにしています。

また、マニュアルには「不明な点は必ず事務所に連絡するように」という一文を添え、送って終わりにするのではなく「不安なときは確認していいんだよ」という心遣いを入れるようにしています。
アプリダウンロード時には、一部乗務員を除き、『このアプリを使って翌日の配送内容が確認できること』という説明を見たかどうかが事務所でわかるように、内容を確認したらタスクを実施済みにするようにしました。一人ひとりが理解できているかを確認できるようにした形です。

また、アプリをダウンロードしたと同時に操作もしてもらえるように、事前にマニュアルをタスク配信しておいて、すぐに実際の運用を体験してもらっています。不安なく使ってもらえるよう配慮し、なるべく引っかかる点がなくなるようにしました。配車表は日曜以外、月曜から土曜まで、祝日でも配信があるので、乗務員自身がミスをしないためにも、マニュアルを見るクセがついてきています。
良かった点としては、事務所管理者が、夕方に電話対応でバタバタすることがなく、目の前の業務に集中できていることです。また、配送予定が決まらずに何度も電話をしてきていた乗務員の心理的負担も、だいぶ軽減できていると思っています。この2点においては、運用開始時に計画していた通りにはなったのかなと感じているところです。
今後はTeachme Bizのタスク配信を緊急時の連絡用にも活用したい
小出氏:
先程もお話しましたように、タスクは普段から利用していますが、今後は緊急時の連絡にも使っていきたいです。連絡網のように使いたいと考えておりまして、実際に使えるよう計画を立てています。
東日本大震災から11年半が経過しましたが、宮城県に限って言えば、いつ宮城県沖地震が起こるかわからないような状況です。地震が起こると、ライフラインもどうなるかわからないため、電話以外の手段として使えるのではと思い、活用しようと考えています。
若者だけの職場であれば、色々なことを応用すると思うのですが、比較的年齢層が高いのもあり、具体的に使用できる一つの手段として、自分の周りの状況がどうなっているのかを送ってもらうことを考えています。周りの状況の写真を撮って添付し、メールを送ってもらうというマニュアルを作成し、活用していきたいと思っています。
さらにステップアップできるようになったら、口頭ではニュアンスが伝わりづらいことや、車が故障した時に状況を伝えるために活用するなど、手軽に使えるようにしていきたいです。現場と事務所間のモヤモヤを少しでも解消していけるようにしていきたい、と思っています。
焦らず着実にTeachme Bizの活用を拡げていきたい
冒頭で定型業務のマニュアル化、事務所の運営均質化のことも柱にあるとお話ししましたが、焦らずに着実に現実化していきたいと考えております。
導入する人、作成する人、閲覧する人、どこか欠けても上手く活用できなかったり、次第に使用しなくなることを懸念しているので、マニュアルも始めから完璧を求めて作成するよりも、より良いものへ作り変えていくように心がけています。そのためにも、Teachme Bizの管理者・副管理者で定期的にミーティングを行い、現場の声に耳を傾け工夫して、これからも上手に使っていきます。
質疑応答
質疑応答では、具体的な取組方法についての質問が飛び交いました。
1「端末操作はどうフォローしていったのか」
ーースマホは貸与されておられるのでしょうか。また、スマホを使いこなしてもらうために何かフォローはしていますか。Teachme Bizの裾野にある端末操作の部分では、どんなフォローをされていたかをお伺いしたいです。
小出様:
スマホは、貸与ではなく個人のものを使っております。そのため、まず導入時に「これから、こんなアプリを会社で使うよ」という話をしました。ほとんどの乗務員が、アプリの導入はスムーズにできたのですが、一部、ガラケーを使っていたり、スマホだけどセキュリティを厳しく設定していたり、簡単スマホでアプリを入れられない者はいました。対応できない者の数は少なかったので、無理やり導入に持っていくようなことはせず、今まで通りの運用としています。
また、弊社は乗務員の年齢層が本当に高いので、"新しいものを受け入れるのに「こんなの大丈夫なの?」という不安を抱くことは、導入する時から目に見えていました。そのため、周りからすると「なんでそこまでするの?」と思われそうなくらいに、一人一人に「ここを●●して、これを××すると▲▲になるんだよ」と丁寧に対応していったんです。その対応を全ての乗務員に行うようにして、わからないときは本当に何回聞いてもいいからね、という形で進めていきました。
実際、最初の1、2週間は「どうすればいいかわからない」と言っていた乗務員も多かったのですが、全乗務員に導入して半年くらいで、そういう声は全く聞かれなくなっています。ちょうど今、年末調整を行うタイミングなので「何日までに書類を出してね」と送るなど、使ってみているのですが、乗務員がそれを見て対応してくれている様子が見られます。そのことからも、色々な活用ができているのかな、すごくうまくいったのではないかな、と思っていました。
質疑応答2「配送予定自動配信の具体的な取り組み方法について」
ーー弊社も運送業なのですが、3点聞きたいことがあります。非常に興味深かったのが配送予定の自動配信の話です。
1点目の質問が、配送予定の自動配信方法です。次の日の配送工程をTeachme Bizに落とし込んでいるのか、ルート配送で手順がだいたい決まっているマニュアルを担当者に渡しているのか、具体的にどういったやり方をしているのでしょうか。
小出様:
1点目の、配送予定の自動配信方法ですが、お客様(荷主様)ごとにフォルダを作って対応しています。弊社全体としては100台規模で配車がありますが、出光様は70台、全農様は30台といった具合に、お客様ごとに台数が決まっています。
そこで、出光様の配車に乗る人は出光様用のフォルダだけが見える、というような形にしています。自分が乗るところ以外のマニュアルが見えてしまうと、似たような名前の納入先があった際に間違えてしまう可能性があるので、乗車するお客様のフォルダだけが見えるようにしました。
ーー配車状況としては、一台で一日何件くらい行かれるんですか。
小出様:
一台につき、多い車両は12〜13件回ります。少ない場合だと、2件などです。配送先が近隣だけでなく、本社のある宮城県塩釜から岩手県の盛岡まで配送するケースなど、遠距離もあるので、一台あたりの配送先数はそこまで多くはありません。
ーーお客様ごとの配送フォルダは、翌日その配送を担当する乗務員しか見られないようになっていて、毎日アップされる配車表と配送先のマニュアルも見られるようになっているのでしょうか。
小出様:
配送先での作業手順は、乗務員がすでにわかっていることが多いので、注意事項を配車表に記載した状態で配信しています。注意事項とは、「●●ガソリンスタンド様では、屋根に注意」「××スタンド様では、油の荷降ろしはこの順番で下ろしてください」「停車する車の位置に気をつけて」などの情報です。こうした注意事項が配車表に書いてあるので、さらにマニュアルを見る作業はないと思っています。
ーーなるほど。アナログで電話をかけて指示していたことを、Teachme Bizに入れるようにして見てもらって、という状態ですか。アナログとデジタルのちょうど中間くらいの感じでしょうか。
小出様:
そうですね。完全にデジタルという感じではないです。
質疑応答3「マニュアル変更時の対応方法とマニュアルの形態」
ーー次に聞きたいのが、配送先や納入方法の変更に対するマニュアル編集対応者についてです。100台規模で動かれていて、その納品先の納品形態が変更になった時に、3名の管理者様が変更作業をされているのか、それとも乗務員さん側で編集して変更しているのか、どちらでしょうか。
小出様:
納品先や納入方法が変わった時の対応について、ですね。前提として、乗務員に配車表を送る際には、その内容は決定事項ということはあるのですが、変更がある場合は、翌日、走り出してからが多いため、アナログですが、乗務員に「今度積む○○スタンドさんの分、中身が変わっています」や「数量が××に変更しているので確認してください」と、電話で直接伝えています。
ーー最後に、マニュアルの形態についての質問です。動画か写真か、どちらがウケがよさそうでしょうか。
小出様:
マニュアルの形態は、静止画です。「乗務する車両は何号車です」という写真1枚と、紙ベースの配送予定表をPDFで落とし込んで送っています。動画は使っておりません。
ーー弊社も年齢を重ねた社員が多いのですが、練習で作るところまでできています。ただ実際の乗務中となると、なかなか難しいと感じており、アナログを混ぜるというお話はとても参考になりました。
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今回、小出様からお話いただいたのは、単なるマニュアル以上の活用をされている事例です。マニュアルを統一したい、といった目的ではなく、「従業員の対応時間を減らしたい」「この状態を、Teachme Bizを使ってどうにかうまくできないか」といった目標に向かってTeachme Bizをご利用いただいています。
Teachme Bizは、作業基準書やマニュアル作成/共有を行うもの、という印象が強くあり、お客様の中には、「自社ではどう利用したらよいか」「何から作ればよいのだろうか」といったお声をいただくことも多くございます。そこでマニュアルとして使うことだけにこだわらずにご活用いただくような目標・目的を設定してみることも、生産性向上の上では大切なのだと我々も気付かされた事例でした。