タイ法人立ち上げで培った現地社員の脱属人化〜社員の入れ替わりが多い風土だからこそマニュアルが活きる〜【前編】

2022-12-23 03:11:48 UTC 2023-03-07 09:16:50 UTC
タイトル

2022年10月13日(木)に開催されたStudist day「タイ法人立ち上げで培った現地社員の脱属人化〜社員の入れ替わりが多い風土だからこそマニュアルが活きる〜」セッションのレポートをお届けします。
当日は、弊社スタディスト・タイ拠点の責任者である豆田裕亮から、タイ拠点の立ち上げから現在に至るまで、マニュアルやオペレーションの工夫、そこでのTeachme Bizの活用について紹介してもらいました。
聞き手は、プロダクトマーケティングマネージャーの木本俊光が務めます。

目次
 
3つのフェーズにわたり業務可視化を進め、属人化を防止 フェーズ1 法人立ち上げ期~業務の可視化スタート~ 業務を依頼するときには、必ずマニュアル作成もセットで依頼する マニュアルをつど肉付けしていくことで、後々さらに効果が出る 「やったことリスト」で可視化されていない業務をあぶり出す 「動画をフル活用する」「最初は完成度50~60%でOK」を意識する

3つのフェーズにわたり業務可視化を進め、属人化を防止

属人化防止の取り組み

豆田:
本日は、海外の少人数法人組織での属人化防止の取り組みについてご紹介します。
Teachme Bizそのものの活用方法より、その前段階での段取りの話が多くなるかもしれませんが、多くの企業様のお役に立つ内容ではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。

まず、自己紹介からさせていただきます。私は前職で製造業の業務改善に従事し、スタディストには創業メンバーとして参加しました。前職・現職通して、可視化や標準化、マニュアル化といった業務を多数経験してきました。

スタディストのタイ進出には、2018年1月の立ち上げから携わり、同年8月に法人を作り、現在5期目を迎えている状況です。
タイ拠点は数字でいうと「6/15」、つまり15人採用して残ったのが6人という状況でして、その中でどう属人化せずに会社を回してきたかについて、ご紹介したいと思います。

今回メイントピックとなるのはタイ拠点・管理部の業務可視化です。
実は、タイ拠点立ち上げから現在までの4年間で、管理部は2回スタッフが替わり、引き継ぎを実施しています。そのため業務可視化についても、立ち上げ時・1回目の引き継ぎ時・2回目の引き継ぎ時と3つのフェーズがあったため、その流れに沿ってご紹介していきます。

フェーズ1 法人立ち上げ期~業務の可視化スタート~

タイ法人バックグラウンド

豆田:
フェーズ1である立ち上げ時について、まずバックグラウンドからお話ししましょう。
タイ含めASEAN全域においては、日本の大企業であっても現地では販売会社のため、5人以下もしくは10人以下で回しているというケースが多いんですね。さらに小規模な組織になると、管理部スタッフが1~2名ということが非常に多く、「この人が抜けてしまうと大変」という風に属人化するのが当たり前という課題がありました。

この課題を放置すると後々大きなデメリットになるとは感じていたのですが、私自身日本ではマーケティングやCSがメインだったため、管理部の作業は未経験でイメージが難しい状態でした。そして、1人目に採用した社員(社員番号1とします)は20代中盤で仕事経験が少なく、管理部の経験もないという状況でした。

業務を依頼するときには、必ずマニュアル作成もセットで依頼する

豆田:
その状況でどのように可視化を進めていったかについて、具体的にご紹介していきます。

まず、社員番号1に何か作業を依頼する際には「必ずマニュアルの作成と同時にしてください」と伝えました。つまり、作業を終えたアウトプットだけでなく、その作業手順も分かるよう毎回依頼したんです。マニュアル作成に関しては、最初は流れが分かればいいので、いきなり100%の精度を求めるのではなく50~60%の精度で作ってもらい、作業を重ねる中で肉付けしていきました。

可視化の進め方

豆田:
そして、分からないことはインターネットで調べるのではなく、顧問弁護士や顧問会計士に連絡してアドバイスをもらいました。作ったマニュアルをオンラインで見ていただき、問題がないか判断いただいて指摘があった部分は修正していっています。

ここで大事なのは「ノートに取らせないこと」です。ノートに取ってしまうと、スタッフ退職時にそのノートもなくなってしまいますので、やったことや教わったことはTeachme Bizに入れて、中身を加えていく形をとっています。

例として、「小切手の書き方」の作業マニュアルを挙げてみましょう。こちらは基本的な書き方だけでなく、パターンがいくつかあったり書き損じの処理の仕方が決まっていたりするので、顧問会計士に聞いて、つどマニュアルに追加していきました。

書き損じの小切手はシュレッダーにかけるのですが、これも知らない状態から調べたり聞いたりしていると、そのたびに20~30分作業にかかってしまいます。しかし、ちゃんとマニュアルに加えておけば、後任のスタッフが「小切手はどうしたらいいんだっけ?」と困っても、すぐに確認ができるというわけです。

マニュアルをつど肉付けしていくことで、後々さらに効果が出る

豆田:
続いて、その後採用するスタッフもほとんどが管理業務未経験者だったため、経験者であれば「これは普通分かっているだろう」というフローについても可視化していきました。例えば、請求書の発行、行政への企業情報更新届出、新入社員の受け入れ準備などです。

特に、新入社員の受け入れ準備は新しく社員が入ってくるたびに準備するものが異なると面倒なので、新採用のたびに1つ1つ追加し漏れをなくしていきました。

冒頭でもお話しした通り15人採用したため、結果的に15回作り直したのですが、後になるほど効果が感じられました。例えば、入社日によって「その月は給与が2日分しかない」などという場合も発生するのですが、そうした給与タームなどの重要な情報も漏れなく伝えられるようになっています。

「やったことリスト」で可視化されていない業務をあぶり出す

豆田:
その後、継続的にマニュアルを作り、月に5件ほどのペースで完成させていきます。そうすると、数カ月後にある程度ペースが落ちてきます。

可視化のペースグラフ

豆田:
なぜペースが落ちるかというと、未経験とはいえ「これは作らなくていい」と独自で判断する業務が出てくるからです。そこで、「作らなくていい」と判断した業務をあぶり出していくという、次の段階に入ります。
あぶり出しの手順は以下の通りです。

  1. コミュニケーションツールを使って毎日の業務を書いてもらい、それをリスト化する
      その際に、以前やったことがあるものは記載せず新しくやったことのみ書いていく
  2. 1~3カ月それを続けると「やったことリスト」ができあがる
  3. 「やったことリスト」の内容に対して、マニュアルがあればリンクを加えていく

こうすれば、リンクがないものはマニュアルがないと分かります。リスト化するとかなり抜けがあったため、全作業を可視化するためにどんどんマニュアルを作っていきました。

2018年9月に社員番号1に入ってもらったのですが、そこから約1年がかりでほとんどの作業の可視化が終わり、マニュアル数は50~60件になりました。

「動画をフル活用する」「最初は完成度50~60%でOK」を意識する

可視化のポイント

豆田:
可視化時のポイントについてまとめです。
青字になっている部分をキーワードとして、押さえていただければと思います。
動画については、Teachme Bizの画面キャプチャ機能を使って動画で撮影し、撮影したものから画像を抜き出していく形で作成しています。

木本:
後編ではフェーズ2、3についてご紹介します。

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